BONATHIAで活躍するクリエイターの方をご紹介する特集。9回目の今回は、YU-YUさんをご紹介します。アーティスト活動を始めたきっかけや制作、これからの目標などを伺いました。
共感覚を武器に変え、アートに落とし込む
―YU-YUさんが作品を作り始めたのは、いつごろでしょうか?
絵を描くことは、小さい時から好きでした、本格的にアート作品として描き始めたのは、2021年8月です。きっかけは、共感覚という概念があることを知ったことです。
―共感覚とは何ですか?
音や文字、人に対して色や映像、匂い、輪郭などを感じることです。私は幼いころからこの感覚があり、今までずっと「正体不明の身体的エラー」だと思っていました。当然この感覚は他の人と共有することが出来ませんので、情報量の多い毎日に違和感を覚えながら独り抱え過ごしてきました。
しかし昨年、この現象に「共感覚」という名前がある ことを知り、不思議と解放された気持ちになりました。それからは 共感覚を「面白い」と捉えられるようになり、「自分にしか見えていない景色を、みんなにも見てほしい」と思い、絵を描き始めました。
―すごくユニークな経緯ですね。絵を描き始めてから、どのように作品を公開していったのですか?
TwitterやInstagramに投稿していました。どこかで勉強するわけではなく独学で描いていたのですが、しばらくするうちに外国人の方を中心にコメントをいただけるようになり、ニューヨークにある美術館に飾っていただいたり、インドのオンライン専門アートマガジンの表紙を飾らせていただいたりしました。現在はSNSに加えてNFT市場にも範囲を広げており、OpenSeaにも作品を出品しています。
―初めて作品が売れた時のことについて教えてください。
日本で活動されているアート団体の方が、私のInstagramを見て「うちの企画する展示会で飾る作品を描いてほしい」と連絡をくださいました。その当時はアカウントのフォロワーがまだ500人くらいだったので、すごく驚きましたし、同じくらい嬉しかったことを今でも覚えています。
―ほかに、 思い出深い作品は何かありますか?
Instagramで「絵にしてほしい文字や言葉はありますか」と投げかけたら、スコットランド人の方が「whimsical Scotland」と回答してくれました。これは「気さくなスコットランド人」 という意味だそうです。この文字を初めて見たときに、こんな映像が浮かびました。
自分の中だけに閉じていたアートが初めて他の人のアイデアと混ざった作品で、とても思い出深いです。
―作品を作る時に心掛けていることはありますか?
「共感覚で頭の中に浮かんだ映像を、いかにそのまま表現できるか」です。作品のテーマは、街角で見かけた言葉や友達に言われたセリフなどで、そこまで強いこだわりがあるわけではありません。それよりも、映像を落とし込むところにこだわり、時間もかけます。
描き始める時はまずテーマとなる言葉を紙に書いて、数時間置いてから改めて目にします。すると、その言葉に応じた映像が頭の中に広がってくるので、それを実際に描いていくという流れです。
―とても難しそうに感じますが、どのくらいのペースで作品を制作できるのですか?
私はスタートアップ企業で営業部のマネジメントを行っているのですが、そちらが忙しいこともあり、月に1~2つ程度です。時間があれば、もっと描きたいと思っています。1つの作品にかける時間は3時間くらいで、構想を始めてから描き終えるまでは絶対に途中で間を空けません。3時間なら3時間ぶっ通しで描き切ります。
アートを通して人生や幸せの言語化を試みる
―YU-YUさんの作品の、最大の魅力は何でしょうか?
これだ、というものがあるわけではないのですが、強いて言うなら、同じものは誰にも描けないということです。ほかの共感覚を持つ人でも、同じ映像が浮かぶわけではありません。また、私の中で生まれる映像は、完全な抽象画ではなく、実像もミックスされています。そういう組み合わせは、自分にしか出せないものです。
―作品を通してお客様に伝えたいことは何ですか
もっと自由に、自分を表現しようということです。「自分の家族はこうだから」「会社のルールがこうだから」「世の中はこういうものだから」というルールに縛られている人が多いように思いますが、それは自分を小さくまとめ上げてしまう、非常にもったいないことだと思っています。人に迷惑をかけることでなければ、もっと自分のやりたいようにやった方が良いと思います。
―これからやってみたいことは何かありますか?
絵と小説を交えた作品を作りたいです。自身の人生を言語化したいと思っているので、文字と絵をリンクさせたいと思っています。
―「人生を言語化したい」とは、面白い着眼点ですね。
そう思ったのは、これまでの人生が非常に刺激的だったからだと思います。私は幼少期から、恐らく他の人が聞くとギョッとしてしまう様な様々な体験をしています。親族・学校・就職先・恋愛など、どのジャンルで切り取ってみてもです。一例ですが、就職した金融業界ではまさに「半沢直樹」を彷彿とさせるような罪のなすりつけを受け、その後私の居場所は無くなり、ちゃんと退職することとなりました。さすがに今はその様なことは起きていないと聞いています(笑)。
そんな、人と変わった人生経験を幾度も経験するうちに、自然と「幸せとは何だろう」と考えるようになりました。これは、自分が不幸だとか、人に慰めてほしいとは全く思っていないのですが、人生の棚卸しをしていく過程や、今だからこそ捉えられている視点を以てして、「幸せ」の言語化をしてみたいと思っています。
―ご自身のそういった思いを作品にすることで、誰かの救いや支えになると思います。
そうだといいですね。支えという意味で言うと、アーティストとして生きていたい人のサポートをしたいと思っています。私の友人でも音楽や小説執筆で生計を立てようと努力している人がいますが、やはり簡単な世界ではないので順風満帆とはいかず、会社員として働きながら、限られた時間の中で夢を追わざるを得ないという状況です。そういう人を支える存在になりたいです。
というのも、私自身は、自分の絵で偉業を成し遂げたいとか、有名になりたいとはあまり思っていません。それよりも、自分以上にアートに対して心血を注いでいる人をサポートすることに意味を感じています。
―最後に、YU-YUさんにとって「作品作り」がどんな意味を持っているか、教えてください。
「共感覚への復讐」です。私は生まれてからずっと共感覚という現象に悩まされてきました。今は逆にそれをアート活動の糧にしています。言ってみれば、私にとって絵を描くことは「共感覚が見せてくる身勝手な世界を俺が全て 整理してやるぞ」という、無限の戦いなのです。
描けば描くほど映像は私の頭の中から出ていくので、1作品仕上げる毎に勝ちが積み上がっていくというゲーム感覚で、これからも作品を生み出していこうと思います。
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